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人とのつながりがプロデューサーをつくる 坂崎大輔氏インタビュー

キリヒラク-時代の先導者たちに学ぶ-

『WEBくじ』をご存じだろうか。コンビニやゲームセンターなどで引くことができる、さまざまなタイトルの限定グッズがあたるくじ。これをリアル店舗へ足を運ぶことなく、WEB上で引くことができるという画期的サービスだ。
そのサービスの屋台骨となっているのが、ディ・テクノのプロデューサー・坂崎大輔である。お客さんのニーズを把握、予測しつつ、数多あるIPからグッズとして売り出すものを選び抜く。選択の一つひとつに伴う責任と、だからこそ得ることができる達成感があるという。坂崎のプロデューサーとしての役割、そして必要な資質とは。

サービスは自身の手でつくりたい

上原:
お久しぶりです。今日はお時間をつくっていただき、ありがとうございます。
坂崎:
いえいえ、上原さんのお願いだし、そりゃふたつ返事ですよ(笑)。
上原:
またまた…。では早速ですが、坂崎さんってもちろん最初からプロデューサーだったわけじゃないですよね。
坂崎:
大学在学中からバンドをやっていて、そもそも音楽で食べていきたかったんですよね。でも25、6のときに、音楽で壁にぶつかって。そのままバンドをやっていくか、就職するかの選択をしなきゃならなかったんです。
上原:
そこでエンタメ業界に?
坂崎:
そのときは、モバイルサイトの運営ですね。当時はガラケーの時代だったんですが、「モバイルコンテンツは廃れない!」と思ったので、キャリアの公式サイト運営をやっている会社に入ったんです。
上原:
当時はたくさんありましたね、公式サイト運営会社。実は、僕も以前は同じような仕事をしていました。
坂崎:
当時は動画配信が仕事だったんですが、あるとき上司がいなくなっちゃたんです。まあ、いわゆる「飛んだ」ってやつですね(笑)。それで、必要に迫られてプロデューサーをやるしかなかったというのが、スタートです。
上原:
そんな理由が坂崎Pの誕生ですか…。
坂崎:
当時はプロデューサーという意識はなかったですけど強制的になってましたね(笑)。それから次第にガラケーからスマホに移行してきて、いわゆるソシャゲの黎明期ですね。そこで、在籍していた会社でも乙女ゲームを開発したりしていました。
でも、スマホへの移行に会社がうまく適応できなくてですね。そんなとき、当時の社長から「ソーシャルゲームを運営している会社を紹介してあげるからいかないか?」と言われたんです。それで転職したのが、二社目ですね。
上原:
そのころからですかね、サンバードがお仕事をご一緒させていただき始めたのも。
坂崎:
そうですね、いわゆるポチポチゲーの全盛期。某筋肉ムキムキ系のゲームではお世話になりました(笑)。
でもそのときの会社は、基本的には受託の仕事がメインだったんですよ。次第に「自社サービスを自ら手掛けていきたい」という想いが強くなって。それでいくつか会社を見ていたときに出会ったのが、ディ・テクノだったんです。少し前から、パチンコメーカーがゲームアプリとかWeb事業に進出していくトレンドがあって。どうせなら、勢いのある新しい世界で勝負してみたいと考えたわけです。
そんなこんなで、もう5年目ですね。

プロデューサーは3年先を見据える

上原:
過去には、『おそ松さん よくばり!ニートアイランド』、現在は『WEBくじ』だったり。おそらく所属している企業や、手がけているコンテンツによっても異なるのでしょうが、坂崎さんの場合はプロデューサーとしてどのような仕事をしているのでしょう。
坂崎:
一般的な役割だとは思いますけど、プロジェクトの進行やメンバーの管理、今の会社では一つひとつの案件をディレクションすることより、長期的な視点で俯瞰するということが多いですね。
上原:
いわゆる、ひとつのコンテンツを完成させることを目指すディレクターとは役割が違うということですね。
坂崎:
これは受け売りなんですが、「現場は1ヵ月、ディレクターは3ヵ月、プロデューサーは3年先を見ろ」ってのをどこかで聞いたことがあって。わかりやすいなーと。
現場の人は自分の作業を管理できていればいいのかなと。だから1ヵ月先までのスケジュールを把握できていればいい。ディレクターは手掛けているコンテンツの展開を先読みしなきゃならない。たとえば次のイベントどうしようか、とか。プロデューサーはマーケット全体を見て、その中でコンテンツをどう成長させていくか予測をしていく必要があるんです。現状は新規事業の役割も兼ねているので次はどんなコンテンツを立ち上げよう、というところまで考える必要があります。
上原:
立場が上だと、求められる責任が異なってくるということですか。
坂崎:
いや、上とか下とかはないと思います。単純に役割が違うというだけで、別に先を見ているから偉いわけじゃないですし。負っている数字の責任はありますけど(笑)。
上原:
確かに坂崎さんは、前から新しいことを考えるのが好きですよね。いつも「こんなことやってみたい」って言っている気がします。
坂崎:
単にそっち側に脳を使うということが、向いているってだけだと思いますよ。今は、『WEBくじ』はまだ可能性が大いにあるから他の展開ができないかとか日々考えています。詳細は言えませんが(笑)。
上原:
さすがにそれを言われても、原稿にできないのでいいです(笑)。チームのマネジメントという面では、どんな部分に重点を置いているのでしょう。
坂崎:
第一に、メンバーを安心させることですね。そのひとつが決断をするということです。決断をする際には、あいまいなことは言わない。しっかりと、「これでお願いします」と、優先度やスケジュールなどさまざまな要素を勘案してするようにしています。
もうひとつが、責任をしっかり取ること。これって上原さんとかでも同様かもしれませんが、プロデューサーって現場に進んで出ていく必要はないと思うんです。現場は基本的にディレクターに任せて、だけどそのかわりに対外折衝などでぶつかったときはしっかり矢面に立つ。これも大きな仕事じゃないかなって思ってます。
上原:
確かに、最近よくそんなことを言われます…。責任を取ってくれる人がいるから、現場は安心して働けるんですね。
ちなみに、メンバーがミスをしたときなんかはどうするんですか。
坂崎:
ちゃんと叱るようにしていますね。叱るというか、ミスをしたときは絶対に原因があるわけじゃないですか。それをしっかり自覚してもらいます。でも、一度叱ったら引きずらないようにします。悪い部分は指摘して、次に活かしてくれればいいよ、という感じで。チーム全体の空気をよくして、気持ちよく仕事をしてもらいたいですから。

「数字」という制限の中で最良の着地点を

上原:
コンテンツそのものについてもお聞きしていきたいのですが、坂崎さんが手掛けているものはBtoCが多いですよね。
坂崎:
そうですね、toBというのはあまりないですね。toCは、お客さんにサービスを直接届けることができて、そのレスポンスも直接耳に入ってくる。それが醍醐味ですね。
上原:
『WEBくじ』だと、すでに人気が確立されている版権を使うわけですが、そのぶん苦労も多いんじゃないですか。
坂崎:
版権モノは、そのファンの方(お客さん)が何を望んでいるのかを把握することが肝ですね。以前やっていた『おそ松さん よくばり!ニートアイランド』にしてもそうですが、『おそ松さん』自体に熱狂的なファンが存在します。そのファンのニーズをしっかり把握しないといけないと思います。
上原:
リアルタイムで、お客さんの意見に耳を傾けているわけですね。
坂崎:
常にお客さんのニーズに対して、アンテナを張っていますね。アプリプロデューサーの時もそうですがコンテンツに関わっているときは、エゴサしちゃいますね(笑)。プラスの意見もマイナスの意見も参考になりますよ!
上原:
気苦労が絶えないですね…。『WEBくじ』の場合は、常に新しいタイトルが動いているんでしょうか。
坂崎:
期間限定ものなので、1タイトルあたりの時間は短いんです。それを絶え間なくやっているので、今だと毎月3案件くらいでしょうか。
上原:
そこの現場はディレクターに任せる感じですか。
坂崎:
道筋をつくって、あとは任せていますね。普段の自分の役割は、新しい版権の獲得と事業としてのスケールを考えることがメインになってますね。
上原:
その版権を選ぶ際に、基準なんかはあるんでしょうか。
坂崎:
今年のチームの事業目標を達成するには結構な数の版権を実施しなくてはいけないので、メンバーが「これならいける」と思えばどんどん企画を出してもらっています。それをチーム内で揉んで、採算面とかもシミュレーションしたうえでGOを出す感じですね。
上原:
ちょうど採算という言葉が出たので、「数字」と「やりたいこと」のバランスはどのように考えているのでしょう。
坂崎:
これはプロデューサーにとって、永遠のテーマの一つじゃないですかね。
シミュレーションした結果、数字面がついてこないとわかると実施するわけにはいかないですよね。ただそんなときは僕の場合は、数字が合わなければなるべく違う形でできないかと考えるようにしています。
たとえば、お皿をつくりたいんだけど、シミュレーションしたら経費が合わない。それで、泣く泣く普通のグッズ構成になってしまうということはよくあるんですよ。でもそれではお客さんを喜ばせることはできないと思うんです。今できる最大限を考えないと。
そこで僕は、お皿がダメなら、もう少し経費が抑えられる同じようなアプローチができるマグカップでチャレンジしたらどうかというような考えです。
上原:
決められた範囲の中で、できる限りよい着地点を模索するということですね。
坂崎:
そうです、バランスは決めなくちゃならないけれど、制限の中でできるだけいいものを。それでうまく着地点が見つかったときは最高に気持ち良いですよ(笑)

人が自分の価値を決める確固たる地盤

上原:
プロデューサーだと、人と会うことが仕事という側面もあったりするんじゃないですか。
坂崎:
側面というか、本業じゃないですかね。でも仕事という感じはしないですね。自分がただの一個人だったらつながれないような人たちとつながれるんですよ。仕事という共通点があるというだけで、お金をもらいながらつながりができるなんて、「本当にこれが仕事でいいの?」って思ってます(笑)。
上原:
僕らにとっては、坂崎さんってお客さんにあたるんですが、まったくそんな感じもしないですよね。
坂崎:
まったくというのもどうなんですかね(笑)。でも、たとえばサンバードさんには、僕らはイラストが描けないから頼んでいる。「お金払ってるんだからやってもらって当たり前」というスタンスはあまり好きじゃないですね。
あくまで対等に、お互いが尊重して仕事ができればいいなあと思っていますね。でないと、「その後」の関係につながらないかなと。だって、ただお客さんってだけで偉そうな人だったら、僕が困っているときに助けたくないですよね(笑)
上原:
まぁ…そうかもしれませんね(笑)。
坂崎:
同様にパートナーとも、良好な関係をつくろうとしてくれる人と仕事をしたいですね。それって阿るとかではなく、言うべきときは言ってくれる人。それは、僕にとってお客さんであっても、発注した先の人であっても同様で。「坂崎、そりゃ違う」って言ってほしいですね。
仕事って人同士でしているので、いい関係をつくれたら、でき上がった作品もいいものになりそうな気がするじゃないですか。
上原:
仕事をしていくということは、人間関係の積み重ねでもあるんですよね。
坂崎:
そうですね。
人とのつながりって個人としても仕事をする上で確固たる地盤になると思うんです。会社が変わってもつながりは変わらないものだと思います。だから、「次も一緒に仕事したいね」というのを積み上げていくことを大事にしていきたいです。
上原:
たぶん、小手先の仕事ができるできないより、信頼できる人がどれだけ周りにいるかが、仕事人としての価値を決めるんですよね。

『WEBくじ』は“熱い”ファンに支えられている

上原:
最後に、今後についてお聞きしていきたいのですが、まずは『WEBくじ』についてです。
坂崎:
先ほども少し触れましたが、既存のアニメやゲーム以外の新しい形での売り出し方を考えています。まだまだ『WEBくじ』は広がる可能性があると思っているので、大切にしていきたいですね。
上原:
それ以上は言えないというやつですね(笑)。
坂崎:
言うと怒られちゃいます(笑)。まあでも、同時に現在の路線でももっと広げていきたいですね。アニメやゲームのタイトルをもっと活用して。
上原:
取り扱うタイトル選びって、なにか法則とかはあるんでしょうか。
坂崎:
これがまた、結構難しいんですよ。タイトル自体の人気と、グッズの人気って必ずしも比例するわけではなくって。思わぬタイトルが売れたり、手堅いと思っていたものがこけてしまったり。
基本的にキャラクター自体に“熱い”ファン層がつくかどうかは結構大事なポイントかなと思います。作品自体がいくら面白くても、作品そのもののファンなのか、キャラクターのファンなのかでグッズへのお客さんの反応は違ってきますね。ファン層の男女比などもかなり影響があったりします。
上原:
じゃあ、今劇場版をやっている『えいがのおそ松さん』なんかはよさそうですね。
坂崎:
ちょうど取り扱わせてもらっているんですが、映画も好調だし、それと相まって評判はいいですね。
上原:
『WEBくじ』以外は、なにかチャレンジしたいことはあるのでしょうか。
坂崎:
基本は、『WEBくじ』の基盤がやっと固まったので、広げるほうに目を向けていますが、実現度に関係ないところで言えば、「YouTuber」に非常に興味があります(笑)。
上原:
YouTuberですか。炎上したり、いろいろ気を遣うこともありそうですが…。
坂崎:
そういった悪い面もひっくるめて面白いと思うんです。誰でもできるんだけど、売れることはすごく難しかったり。収入の面でもやはり夢がありますよね。なんてったって小学生がなりたい職業トップ3に入ってますからね(笑)やっぱり、夢のある仕事をしたいですよね。
上原:
なんなら僕のプロデュースをしてください…。最近、キャラが薄いと社員から言われるので。
お忙しい中、本日はありがとうございました。またお仕事でもご一緒したいですね。
坂崎:
こちらこそ、本日はありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。

©赤塚不二夫/えいがのおそ松さん製作委員会 2019
©D-techno

坂崎大輔

株式会社ディ・テクノ所属。『おそ松さん よくばり!ニートアイランド』や『WEBくじ』といった、さまざまなコンテンツをプロデューサーとして手掛けている。現在は『Fate/Grand Order Design produced by Sanrio WEBくじ』を販売中。過去には『えいがのおそ松さんのWEBくじ 『Rain・Memories』』『ロックマン30周年記念WEBくじ~BOSS COLLECTION~』『プリティーオールフレンズWEBくじ ハピラキ!』など幅広いジャンルを展開。今後もさまざまな版権で展開予定。