FEATURE
イロドリ
鮮やかに、そしてシンプルに ryotaインタビュー
イロドリ -イラストレーション業界の先駆者たち-
若手イラストレーターといえば誰を想像するだろうか。iLLab.編集部がイチオシするのが、このryota氏だ。ゲームタイトルに適したタッチで描くことができる技量はもちろんのこと、特筆すべきはそのオリジナルイラストの精度の高さ。技法としては厚塗りを使いつつ、単色をベースとした独特の色使いでしつこさを全く感じない。見るものを惹き込む透明感と愛らしい表情は、「ryotaの絵」という世界観を確立しつつある。
女の子の魅力は「手」でみせる
――何度かお仕事をお願いしていますが、こうしてしっかりとお話を聞かせていただくのは初めてですね。
――そして、かなりお若いということにびっくりです。デッサンもしっかりしていて、何よりも一目見て「あ、ryotaさんの絵だ」とわかるので、経験も豊富なのかと思っていました。
――そうなんですね。それ以前は学校に通ったりしていたんでしょうか。
――では、そのころに今の画風が確立されたんですかね。塗りも特徴的ではありますが、女の子のリアルな仕草を表現した構図がとても魅力的ですよね。
――この絵なんて、社内でも「カワイイ!」と評判だったんですが、同様につくっていったんでしょうか。
タロットだったら、運命を司る神様的な感じかなぁとか考えてデザインが現在のものになって。あとは本とタロットを際立たせるために、色使いにも気をつけていますね。あえて青一色をベースにして、本とタロットに目が行くようにしています。
――あと、完全に僕の趣味ですが、表情がツボなんですよね。特に、ryotaさんのオリジナルイラストに共通しているこの目。
だから、昔つくった仕事用のキャラクターを、今描きなおすことってあるじゃないですか。たとえば期間限定のイベントキャラみたいな形で。それをつい現在の感じで描いちゃうと、「ダメです!」って言われちゃったり。
――表情もツボなんですが、ryotaさんの作品っていろんなイラストの中で目立つと思っているんです。コテコテの厚塗りかアニメ塗りが多い中で、シンプルなようで深みがあるというか。
――なんというか、デフォルメと描き込みのバランスが独特だと感じます。キャラクター自体はデフォルメ色が強いんですが、肌や髪はもちろん、たとえば革の小物ならしっかり革の質感でという。
――わかります、なんか。ryotaさんの絵って、エロいというよりドキッとする感じがするんですよね。たぶん表情や仕草のせいなのかも。
それに、手フェチの人もいますし、手をどうしてもこだわりたい僕と、win-winですよ(笑)。
リアルをデザインとして作品に落とし込む
――先ほど、画風が初期とは変わっているというお話がありましたが、影響を受けている人、尊敬している人はいるのでしょうか。
その方の作品は、都度ネットでチェックして刺激を受けています。
――先ほどお話していただいた方ですね。身近に参考になる人がいるというのは羨ましいです。その方はどんなところがすごいんですか。
もともと僕は、エロさを感じるような絵を描きたいという願望はなかったんです。でもその人のせいで、だいぶ方向性が変わりましたね。
――ではryotaさんのキャラクターの肉感というか、肌の質感なんかも、その方の影響が濃いわけでしょうか。
――その質感を出すにあたって、コツというか気をつけていることはあるんでしょうか。
影って、そのキャラクター全体の印象を左右するんです。たとえば、ダークなキャラクターであれば下から光を当てたりとか。キャラクターを魅せるために必須なので、僕の場合は設定の時点で光と影の演出は決めていますね。
――ちなみに、色使いについてもその上司の方の影響はあるんですか。僕がryotaさんの絵を好きだというポイントのひとつが色使いなんです。ひとつの色のグラデーションで構成されていることが多いので、画面がガチャガチャせずに統一感があって。
もちろん、仕事のときは仕事用の配色にしていますけどね。
――やはり仕事のときは、派手さを求められることが多いですか。
――ちなみに、好きなものや趣味だったり何かデザインするうえでのバックボーンはあるんですか。
――いや、ryotaさんの衣装デザインって、よくできているなぁと思って。
どうにかして、自分のデザインに落とし込めないかと考えたり。
――なんかわかる気がします、いろんなものを作品というよりデザインとしてとらえているから、万人受けするような絵につながっているのかも。
――妙に服やアクセサリーにリアリティがあるんですよね。こういったイラストだと、「架空の衣装」みたいなことが多くなってしまうと思うのですが。
自分の作品の個性ってなんだろうと考えていた時に、見つけ出させてくれたのがその友人だといっても過言ではないと思います。
おそらく、自分の作品にリアリティがあると感じていただけるのは、リアルのものをデザインの中に落とし込むことが多いからではないでしょうか。
クライアントも自分も納得できるラインに
――これからの活動について、少しお話しいただければと。
まずは、イラスト自体についてですが、どんなものを描いていきたいというものはあるんでしょうか。
――イラストの内容としてはどのようなものを?
仕事だったら、本の装丁イラストはやってみたいですね。今までは、ゲームなどのデジタル媒体が多いので、また違う楽しみ方があるのではないかと思います。
――装丁イラスト、いいですね! 個人的にはゲームタイトルの、メインキャラデザインをryotaさんオリジナルのタッチで見てみたいという気持ちもあります。
――そのお仕事をやっていく中で、気をつけていることというか、どんな姿勢で取り組んでいるのかを教えてもらってよいでしょうか。
どんな仕事でも、時間には限りがあるじゃないですか。その時間内に、クライアントともちろん僕自身も納得できるようなクオリティで仕上げなければいけない。
――〆切という約束を守ることが大事?
ただ、ギリギリのラインまでクオリティを高めることに注力しても、どうしても自分自身では納得しきれないこともあるんです。でも、自分の中で一定のクオリティラインを設けて、言い方は悪いですがときには妥協することもフリーランスでやっていくうえでは大切だと思います。
――なにか小骨が引っかかったような言い方ががちょっと気になりますが(笑)。でも妥協が必要というのはよくわかります。もちろん出して恥ずかしくないものには仕上げますが、よいモノをと思うと限りがない場合もありますからね。
僕自身は、ディレクターだったり編集者だったりするので、やはり泣く泣く諦めるということもあります。
――僕らとしても、作家さんにそういった姿勢でいてもらえると助かりますね。
本日はお忙しい中、ありがとうございました。ちょっとだけryotaさんのことがわかった気がします。
またお仕事のほうでもよろしくお願いします。
――その際にはもちろんです!

ryota
専門学校を経て、ゲーム会社にて勤務。その後、フリーランスのイラストレーター、専門学校の講師としても活動する。フリーランスとしての歴は短いながら、その確かな技術には定評があり、透明感のある独特のタッチにはファンも多い。
美雲このは2ndシングルCD『Docking☆Heart』ジャケットイラスト/美雲このは3ndシングルCD『空色Drops』ジャケットイラスト/梅宮さん2ndシングルCD『Don’t Stop, I’m Coming』ジャケットイラスト/『彼女図鑑 ガールズアートイラストレーターファイル』 (ソーテック社)イラスト など多数の作品を手掛けている
Twitter:@ry_o_ta_