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メカと少女に込められた想い 島田フミカネインタビュー

イロドリ -イラストレーション業界の先駆者たち-

エンタテインメント業界の1ジャンルといっても過言ではない、「メカ×美少女」。そのパイオニアのひとりが、島田フミカネ氏だ。意思の強さとあどけなさが同居したキャラクターと、精巧にデザインされつつもキャラクターの魅力を引き出すメカニック。“フミカネ絵”と評されるように唯一無二の世界観を持ち、ゲーム、アニメ、プラモデルなどその活躍は幅広いフィールドに及んでいる。長きにわたりファンに愛され続けている“フミカネ絵”の魅力に迫る。

メカ少女は自分の「かっこいい」「かわいい」を形にする

――本日はよろしくお願いします。実は僕が島田フミカネさんの絵が大好きでして、作品自体のことはもちろん、つくりだすときに考えていることなどもお伺いできればと思っています。

島田フミカネ(以下、島田)

島田:
こちらこそよろしくお願いします。

――早速ですが、いつごろからイラストを描き始めたのでしょうか。

島田:
子どもの頃から図工の時間は大好きだったんですが、イラストレーションと呼べるようなものを始めたのは20年くらい前でしょうか。

――誰かに教わったりとか、学校に行ったりとかは。

島田:
専門的な教育は受けてないです。Photoshopやペインター、クリップスタジオといったツールに関しては参考書を買ったりしましたが、基本的には独学です。

――確か、最初からイラストレーターというわけでなく、会社勤めをしていたんですよね。

島田:
会社勤めと半ば趣味でイラストを描いている感じでした。描き方について悩むことはなかったのですが、やはり時間をつくるのには苦労していましたね。
そんなとき初めて絵のお仕事をいただいたんです。ただ、過去にHDDのデータが壊れちゃったことがあって。今みたいにこまめにバックアップをとっているわけじゃないので、その絵を含めて、過去作はいくつか無くなったものがあります。これも20年くらい前だったかな。カードゲームかなにかのイラストだった気がします。

――その頃って、そもそも多くの作家さんがデジタルに移行していない時期ですよね。僕が仕事をし始めたのは15年くらい前で、MacのG3を使っていました。そのときと比べると今はいいですね。

島田:
そうですね、僕が始めたころは定額のネット接続が始まったばかりでしたし。もちろん、pixivのような投稿サイトだってありませんでした。今はネット環境が整って、発表の場が開かれているのでチャンスも多いですよね。

――「イラストレーター」のプロとして、お客さんの目に留まる機会が多いですからね。

島田:
そのぶん、平均レベルはすごく上がっているように感じます。日本国内もそうなんですが、アジア圏の作家さんの「日本のアニメ風」がどんどん洗練されて行っているんですよね。発表の場はたくさんあるけれど、その中で目立っていくのは以前より大変だと思いますよ。

――島田さんが「メカと少女」を題材として描いているのは、自分の立ち位置を確立するという意味もあったりするんでしょうか。

島田:
単純に、好きだからということが一番の理由です。描きたいものと描けるもの、そこにお客さんやユーザーの求めるもの、つまり需要と供給が幸運にも同じ方向だったんですよね。
ただ、メカ少女というジャンルであれば、結果的にニッチな需要というものを獲得できるとも考えています。ファンタジーや学園ものといったものも描けなくはないと思うんですが…そういったジャンルは描き手の数も多いですから。

――やはり島田さんの代名詞といえば、「メカ少女」だと思いますが、描くときにコツはあるんでしょうか。メカのアイデアもそうだし、キャラクターもメカに食われていないというか。

島田:
僕の場合は、テクニックや法則とかはないですね。意地悪で言っているのではなく、本当にないので教えられなくてすいません(笑)。かなり感覚的に描いています。ただひとつ言うとすれば、あくまで自分の中での「かっこいい」「かわいい」になっているかです。そこが揺らぐと良くないと思います。
あとは、ジャンルとして美少女ものの派生としてなので、人体が見えなくなるほどの重装甲はあまり描かないですね。本体はキャラクターなので、それを邪魔するほどのメカというのは本末転倒というか。
揺らぐことのない「かっこいい」「かわいい」の感覚

商業では「いい絵」の基準を案件ごとに持つ

――「仕事」としてのイラストについてお聞きしていきたいのですが、商業として絵を描くにあたって、気を付けていることはありますか。

島田:
ある程度まとまったお仕事をいただけるようになってくると、時間の管理がとても重要になってきます。正確には、時間と質の管理でしょうか。
数が増えると、自然と一枚に時間をかけすぎるわけにはいかないですよね。すると、キリのよいところで完成としたり、スケジュール管理に気を遣わなければならないことが多々あります。手を抜くというわけではなく、自分の中で基準をつくっておかなければならないですね。

――職業が違う僕としても気になるのですが、どんなところで「キリのよい」としていますか。たとえば、自分で納得できたときなのか、自分の中で80点くらいなのか、それともクライアントの要望を満たしたときなのでしょうか。

島田:
たとえばですが、女の子がメインのイラストで、背景にレンガ壁があったとします。そのレンガをひとつずつ丁寧に描写して…というのは、「いくら頑張っても同業者目線の評価でしかない」部分だと思うんです。
もちろん一定の基準をクリアしていることは前提ですが、そのレンガの質に関して、一般のユーザーさんは、キャラに向けるのと同じ評価をくれるとは思わないんですよね。逆に、背景の美しさが求められる仕事なら、人物はそれを邪魔しない程度の描写でいいんじゃないでしょうか。

――力を入れなければならない点というか、何が求められている仕事なのかを把握するということですね。

島田:
商業である以上、多くの場合はイラストを見る人が存在するんです。クライアントはもちろん、エンドユーザーも。その人たちが何をもって「いい絵」だとするかでしょうね。媒体がイラストだったり、ゲームだったり、アニメのキャラクター原案である場合もそれは変わりません。

――ちょうどキャラクターデザインの話が出たので。島田さんといえば、『ガールズ&パンツァー』といった作品などのキャラクター原案を手掛けていますが、その際に重要だと考えていることや、キャラクターを魅力的に見せるためのこだわりはあるのでしょうか。

島田:
ありがたいことに、現在自分が描いているものを見てクライアントが発注してくくれているので、改めて意識したりということはないですね。
ただ、手探りで不安に思いながら描いていると、そういう空気は伝わるようです。だから、まずは「自分のかっこいい、かわいいはコレだ!」というものを描いてしまったほうが結果的に早いかもしれません。そののち、クライアントからの要望を肉付けしていくといいのではないでしょうか。
あとは、色のイメージを最初から明確に持っておくために、ラフ段階から簡単に着彩して作業しています。色も込みでキャラクターのデザインなので、クライアントにも認識していただきたいですから。

――確かに、色つきだとキャラクターの個性が伝わりやすいですね。ちなみに、これは僕の主観なのですが、島田さんの生み出すキャラクターって“さわやかなセクシーさ”があると思っているんです。いわゆるエロじゃなくって。

島田:
美少女ものをメインでやっている以上、気取ってお上品というようには考えていません。ですが、少年誌に掲載しているような「お色気担当漫画」くらいの、“エロではなくてエッチ”に収まるくらいの表現を意識してはいますね。

――“エロではなくエッチ”! なんかその表現はしっくりきますね。そしてキャラクターとともに忘れてはいけないのがメカだと思うんですが。

島田:
工学や設計を学んだわけではないんですよね。それに研究家というわけでもないし。なので、メカをデザインする際は、実際の建設重機や産業ロボットなどを参考にしています。「これなら動きそう」とか「ここが溶接の継ぎ目だ」といった“らしい”要素を入れるようにしています。

――工学視点というよりは、ユーザーにとってのリアリティという感じでしょうか。

島田:
そういう部分もあります。ただ、模型や可動フィギュアのデザインといったケースも多いので、そもそも工業製品としてつくれないものだったり、実際につくっても関節が動かないようなデザインはNGという側面もあります。

――ミリタリー系、特にコンシューマーゲームだったりすると、実在の銃器が登場するとダメだったりしますよね。

島田:
だから、結局は複数の兵器を掛け合わせて架空のものをつくったりすることが多いですね。そのあたりは、意匠権やライセンシー、海外では実銃での事件や規制問題もあったりするので個人的にどうこうできはしませんが…。銃に限らず、歴史上の出来事や過去の風俗を描く際に、現在の価値判断基準だけで判断するというのは窮屈だと感じますね。

――確かに、現在の情勢や都合と、“物語”として扱うものは別物ですからね。「創作である」という判断基準を持ってくれると、もっと自由度が高くなるでしょうね。

島田:
まあそのへんは、ずっと議論されるだろうし、決着もつかない気もしますけどね。

歴史と実績があるからこそ王道である

――さて、直近で手掛けている作品についてお聞きしていこうと思います。まずは『アリス・ギア・アイギス』。

島田:
アリスギアでは、メカに造詣の深い海老川兼武さんと柳瀬敬之さん、このおふたりと一緒にキャラクターデザインをさせていただいています。また、全体的なキャラクター監修もさせていただいていますね。

――このゲーム、「あ、フミカネさんだ!」って思ってやっているんです。やっぱり一目でわかりますよね。それに、キャラクターの個性が絵だけでかなり表現されていると感じます。他作品だと『ストライクウィッチーズ』なんかもそうですが、ぱっと見で性格まで想像できちゃうんですよね。

島田:
キャラクター表現に関しては、先人の積み上げてきた技法や定番があるじゃないですか。僕の場合は、奇をてらうよりは素直にその枠内で考えるようにしています。キャラクター原案の場合は、クライアントからかなり具体的な要望があることが多いので、あえて捻ってということはしないようにしています。
清楚なお嬢様なら黒髪ロング、元気なスポーツ少女ならショートカット、王道が王道として成り立っているのは、それに見合った実績や歴史があるものです。

常に王道を意識しつつキャラクターの個性を表現している

――この作品の場合は媒体がゲームで、しかも3Dじゃないですか。特に気を付けていることはあるんでしょうか。

島田:
アリスギアという作品に関してだと、ゲーム中常に見えているのが背中側なんです。単発のイラストだとあまり重視しなかったり、なんだったら描かないような背中のバランスにも気を遣っていますね。

――確かに、ひとつのイラストに対して気をつけなければならない点が多いのではないでしょうか。

島田:
そうですね。専用のスーツであったりアーマー、武器やギミック…デザインが必要な要素がとても多いですね。そこに加えて、3Dモデル制作用に詳細な設定を描くのは大変ですね(笑)。
でも、アリスギアでは、優秀なモデル、モーションのスタッフに加え、ビューアーやスクリーンショットの機能も充実しているんです。絵を担当した僕にとって、その素材をフルに活かしてくれる、苦労した甲斐があるものになっています。

――いや、ほんとうにこのゲームいいですよね。いわゆるカード絵とは違う楽しみ方ができて。キャラクターもそうですが、メカの魅力も伝わります。

島田:
僕らもそうですが、スタッフさん全体が「キャラとメカの魅力を伝えたい!」という愛情でつくっている作品だと思うんです。ぜひ一度やっていただけると。
ゲーム内では3Dモデルを十分に堪能できるビューアーを搭載

自分の絵の魅力を知って磨いていく

――もうひとつ、プラモデルシリーズのスピンオフという、変わり種の作品になりますが『フレームアームズ・ガール』。

島田:
これ、実はそもそも同人誌で勝手に描いていたものなんです。

――そうなんですか!

島田:
もともとあった『フレームアームズ』シリーズの機体を、擬人化したイラストを描いていたんです。

――では、最初はプラモデルとして商品化は考えていなかったんでしょうか。

島田:
そうですね。でも、いつもの癖で「金型で抜ける形にしておく」とか「現実的なボリューム感」といった点を意識していたので、プラモ化するにあたりスムーズだったのかとは思います。
あまりそこにとらわれ過ぎても窮屈ですが、「強度」や「価格」といった現実の制限を無視しすぎると、「面白いデザインだけど商品化は無理」となってしまいますので最低限の注意はしています。
商品化を常に意識したメカニックデザイン

――もととなるメカがあるわけじゃないですか。それを擬人化するうえで注意していることはありますか。

島田:そのメカのどの要素を描けば最低限それに見えるか、どこまで削ってしまうとそれに見えなくなってしまうかは意識しています。特に、戦車や艦船といったような人型をしていないものは、擬人化の時点で元のシルエットから大きく変化するので、どの要素を拾うのかは悩みますね。

――そのメカを象徴するようなディティール、つまり記号のようなものをしっかり盛り込んでおくということですね。

島田:
たとえば、改良型や後継機があるようなものだと、「改良型ではこのパーツがなくなりました」ということが特徴なのに、ベース機体でそのパーツを描いていなかったら、「あったものがなくなった」という表現ができなくなります。
そういう部分も含め、擬人化ではどのディティールを拾うかは、リサーチに時間がかかることも多いですね。

――どの部分をフィーチャーしていくかは、経験とセンスが必要になりそうですね。

島田:
確かに、長年やっているからこその勘所ということはあるかもしれませんね。

――これからキャラクターデザインを志す人に、さまざまな作品を経験してきた島田さんから何かアドバイスがあるとしたらなんでしょう。

島田:
アニメにせよゲームにせよ、原案としてデザインしたとしても、最終的に出来上がったキャラクターが「こんな性格やしゃべり方、位置づけだったの?」ということはよく起こります。
だからこそ、あまり思い悩まずに、自分が自信をもって出せる「いいものはこれだ」という得意なものがあればいいと思います。だから、自分の長所を見極めて、それを磨いてほしいですね。依頼する側も、この人の魅力を最も引き出せる絵はこれだと思って発注しているはずなので。
趣味から派生した『フレームアームズ・ガール』

アマ時代から締め切りを意識した仕事を

――島田さんの絵は、世の中で「フミカネ絵」なんて呼ばれたりしています。時代を問わず、自分の立ち位置を確立したからこそだと思いますが。

島田:
正直、自分でそういうことを分析するのはとても気恥ずかしいですが…。あまり浮気をせずに、ひとつのジャンルにこだわって続けているということを評価していただいているのかもしれません。

――先ほどもありましたが、ひとつ自分の武器を持っているということは大切ですね。

島田:
「この人はこういうのが好きで得意なんだ」ということが見えないと、クライアントも依頼しづらいじゃないですか。だから、やはり自分だけの武器は持っているの越したことはないですね。

――他のジャンルに浮気をする予定はあるんでしょうか。

島田:
今は、いただいた仕事や続いている仕事をこなすことで精いっぱいです。他のジャンルに手を出すことがあっても、完全に趣味でということだと思います。

――まあ、僕も個人的には、まだまだ島田さんのメカ少女を見たいですね。では、今後どういったものを表現していきたいでしょうか。

島田:
アマチュア時代から、ありがたいことに好きなものを描いて続けさせてもらっているんです。だから、格別新しいことをというのはなかったりします。
もちろん技術やセンスが向上するといいなとは思いますが、描くものの方向性は変わらないのではないでしょうか。

――あくまで今の延長線上ですね。

島田:
描きたいものが描けているので、そうやって生まれたキャラクターや、その子たちが出ている作品が評価されたり、ユーザーの皆さんに喜んでもらったり。それが一番の望みです。

――最後に、これからイラストのプロを目指す人たちにアドバイスをお願いします。

島田:
同人誌制作やイラストコンテストなどに応募している方も多いと思いますが、アマチュア時代からスケジュール管理を意識してほしいですね。「実際の締め切りやイベント日より、かなり余裕をもったところを締め切りにして、それを守る」ということはやってみてもいいのではないでしょうか。
徹夜続きや締め切りやぶりの武勇伝は、それでも周囲が待ってくれる一部の大先生のものなんです。余裕をもって仕上がったほうが、クライアントも喜ぶし頼みやすいですからね(笑)。

――ごもっともです。結構イラストをお願いするときの基準のひとつだったりはします。

島田:
あと、あくまで仕事相手は担当さん。つまり同じ人間なので、基本的な社会常識は守っていきましょう。待ち合わせの時間に遅れないとか、メールの文面を丁寧にするとかね。

――お互い気持ちよく仕事をできると、やはり次もお願いしたいと思います。僕らもしっかり気をつけたいです。
本日はありがとうございました! 正直、憧れの島田さんにお話が聞けて、仕事ですが楽しかったです。

島田:
こちらこそありがとうございました。少しでも参考になると嬉しいです。

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島田フミカネ

岡山県出身・在住のイラストレーター。「メカ×少女」をモチーフとした作品を数多く発表しており、メカ少女ジャンルでの先駆者というべき存在。デザインしたキャラクターは、フィギュア化されているものも多数ある。
代表作に『ストライクウィッチーズ』(キャラクター原案・原作)、『ガールズ&パンツァー』(キャラクター原案)、『アリス・ギア・アイギス』(キャラクターデザイン・キャラクター監修)、『フレームアームズ・ガール』(キャラクターデザイン)など。
公式ブログ:http://www.ne.jp/asahi/humikane/e-wacs/
Twitter:@humikane

アリス・ギア・アイギス

ゲームメーカー”ピラミッド”と、スマートフォンゲームメーカー”コロプラ”がタッグ!
メカを武装した少女たちと共に戦う、新感覚スマートフォンゲームが登場!
本作のキャラクター監修・キャラクターデザインは島田フミカネ氏が担当しています。
さらにキャラクターデザインには、島田フミカネ氏に加えてメカニックデザイナーの海老川兼武氏や柳瀬敬之氏らも参加。
またサウンドチームに「ZUNTATA」を迎え、人気・実力を兼ね揃えた豪華クリエイター陣が集結!
さらに「メガミデバイス」「figma」などのホビー展開も進行中!
さまざまな企画展開にご期待ください!
公式サイト:https://colopl.co.jp/alicegearaegis/
公式Twitterアカウント:@colopl_alice ※公式ハッシュタグは「#アリスギア」です

FRAME ARMS GIRL【フレームアームズ・ガール】

コトブキヤオリジナルロボットコンテンツ「フレームアームズ」の各機体を“美少女化”したスピンオフ シリーズ。2017年にTVアニメ化され、2019年6月29日から「フレームアームズ・ガール~きゃっきゃうふふなワンダーランド~」の劇場公開が決定している。
アニメ公式サイト:http://fagirl.com